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2月
17
2011

器の種類と形

器の種類なんて、皿、丼、茶碗、湯のみ、急須程度を覚えておけばまぁ大体OKですが、やっぱりもうちょっと詳しく知っておくとよいですよね。

国宝の茶碗など、美術館に並んでいるような器には難しい名前が付いていますが、大抵は、見た目の形(器の種類)や、柄、大きさがそのまま名前になっていますので覚えておくと美術館廻りが楽しくなります。

丸皿

一般的な丸いお皿です。高台が付いているものと付いていないものにあります。

丸皿

角皿

角のあるお皿です。四角以外にも五角形(五角皿)や八角形(八角皿)のお皿もあります。

角皿

四方

正方形のお皿です。

四方

俎板(なまいた)

平らな長方形の皿に足が付いているものです。寿司ゲタに近い感じ。

俎板

長皿

横に長い皿です。角が丸いものは長丸皿や四角いものは角長皿。

長皿

半月

丸皿の一部が切り落とされた形です。半月のように半分のものもあれば、一部だけが切り取られた形のものもあります。

半月

隅切

四角形の皿の隅を切り落としたような形です。

隅切

輪花(菊花・梅花)

花の形を模した形状です。菊やウメをモチーフにする場合が多いですね。

輪花

木の葉

木の葉を模した形状で、葉脈などが掘り込んであります。紅葉や笹などの形もありますね。

木の葉

木瓜(もっこう)

家紋の一種で木瓜文に似た形のお皿です。

木瓜

ドラ

皿の隅が垂直に切り立っている丸い皿です。楽器の銅鑼(ドラ)に似ているためでしょうか。

銅鑼

高台

皿の下に足や高めの高台がついているものです。鉢でも足が付いているものは高台と呼ばれます。

高台

鉢・向付

皿に比べて、深いものを鉢といいますが、区別は難しいですね。なんとなく雰囲気です。窯元であれば直接聞くのが早いですね。(どっちでもいいって言われることもあります。)

向付は、懐石(会席)料理などのお膳で、向こう(遠いほう)に置かれた小さめ鉢のことです。基本的に一人用で、ご飯、汁、メイン料理以外のもの(膾や和え物)をつける器です。

片口

鉢の左側に注ぎ口がついているものです。

片口

扇の形を模した鉢です。東京国立博物館の織部扇形蓋物が代表作ですね。

扇

割山椒

山椒の丸い実が3つに割れた形を模しているものです。切れ目から料理が見えるのが良いですね。

割山椒

角違

四角の鉢を2つ合わせた形の鉢です。3つの足が付いています。愛知県陶磁資料館の織部角向付をみると、いろんなタイプがあることがわかります。

かくちがい

手付

陶器でできた取っ手が付いているタイプの鉢です。取っ手は飾りなので持ってはいけません。花器として使われることもあります。収納や片付けを考えると、普通の家庭で使うのは難しいですね。

手付

耳付

耳のように左右対称にもち手が付いている鉢です。もち手の形はいろいろです。

耳付

グラタン皿(スープカップ)

耳付の中でも、そのままオーブンにいれたり、耳を持っても大丈夫なものはグラタン皿やスープカップとして使えます。

やきものは熱に強いのでオーブンに入れても大丈夫ですが、上絵のある器に焦げが付くと困るので注意しましょう。

その他の食器

ご飯茶碗

ごはんを食べるための茶碗です。抹茶の平茶碗を小ぶりにした感じでしょうか。抹茶の平茶碗をご飯茶碗にしても良いと思います。

お茶わん

そば猪口

蕎麦や素麺などのつけ汁の器ですね。大きめの猪口として日本酒を飲んだり、焼酎やウイスキーをロックで飲んでもOKです。

蕎麦ちょこ

どんぶり

大きなご飯茶碗といていいのかな?窯元でどんぶりを探してもなかなか見つからないので、深めの鉢で代用すると高級感があってグッドです。

丼

呑水(とんすい)

鍋で取皿としてつかうものです。これも窯元で探しても見つからないものですね。口の広い小鉢で代用すると高級感があってグッドです。

とんすい

カップ

コーヒーカップや紅茶のカップです。取っ手のついた湯呑みと言ってもよいかも。皿(ソーサー)とセットになっています(ない場合もあります)。

カップ

マグカップ

カップより大きめのカップです。皿は付きません。

マグカップ

フリーカップ

取っ手の付いてないカップです。湯呑みより大きめのサイズである場合が多いですね。フリーというだけあって形には窯元の個性が出ます。

フリーカップ

酒器

徳利(とっくり)

お酒を入れる容器です。もともとは酒屋で酒を詰めて持ち運ぶ容器です(今でいう一升瓶みたいな感じ)。飲むときは銚子に移し変えて使っていたそうですが、徐々に徳利から直接の飲むようになったそうです。

徳利

銚子

注ぎ口がついた入れ物です。熱燗をいれた場合に熱くないようにもち手が付いているものもあります。

銚子

瓶子

徳利や銚子が出来る前にお酒を入れていた容器の事です。胴よりも肩のあたりが大きく、口が小さくなっています。愛知県陶磁資料館の古瀬戸灰釉瓶子は古瀬戸(鎌倉時代)の名品です。

瓶子

船徳利

船で運んでも倒れないように、底が広く平らになっています。

船徳利

雲助徳利(うんすけどっくり)

注ぎ口のついた徳利です。

うんすけとっくり

杯(盃・さかずき)

お酒(日本酒)を受ける器全体のことを指します。どちらかというと、三々九度や相撲の優勝のイメージから口が広くて薄い形のものを杯って呼びたくなりますね。

杯

猪口(ちょこ)

日本酒を飲むための小さめの器です。

ぐい呑み

ぐい呑

猪口よりも大きな器がぐい呑みです。使い分けは気分の問題です。小さめの抹茶茶碗と行ってもよいかな。(抹茶茶碗のテスト用にぐい呑みを作ったりするそうです)

ぐい呑み

馬上杯

馬の上でもしっかり握れるように、杯のしたにもち手となる足がついた器です。両手で持って抹茶を飲む抹茶茶碗サイズのものもあります。

馬上杯

ビールカップ・ビールジョッキ

フリーカップの中でも泡立ちのようにように加工されたものを特別にビールカップ・ビールジョッキとしています。日本製では少ないですが、ドイツの工芸品として陶磁器製のビールジョッキが有名です。

ワインカップ

ワイングラスに似せた形の陶磁器です。雰囲気は良いですが、ガラスのグラスのほうがワインが美味しいと思います。

茶器

茶碗(抹茶茶碗)

茶会で抹茶を飲むのに使います。

茶碗

夏茶碗(平茶碗)

抹茶茶碗の中でも口が広がって、お茶が冷めやすい様になっている茶碗です。夏向きの涼し気な文様になっています。

平茶碗

天目茶碗

中国宋の時代に天目山から帰った修行僧が持ち込んだ茶碗が元と言われています。

天目茶碗

鉄釉がかかった茶碗を広く天目茶碗と呼びますが、2段に広がった口の独特の形状を天目形や、鉄釉が焼成中に化学反応を起こして幾何学的な模様をつくる窯変天目など、天目特有の特徴を備えたものが天目と呼ぶことが多いですね。

静嘉堂文庫美術館の国宝:曜変天目茶碗

井戸茶碗

朝鮮半島で焼かれた陶器(東京国立博物館の国宝:大井戸茶碗)の雰囲気をもった茶碗を井戸茶碗と呼びます。何がどうだから井戸茶碗という定義はないので、見た人がそう思えば井戸茶碗です。

水差

お茶の席で、茶碗を洗ったりする水を入れておく壺です。わりと大きめで蓋が付いています。

水差

急須

お茶を注ぐ器の事です。もち手の場所で急須・土瓶・ポットと呼び方を区別する場合があり、その場合もち手が注ぎ口の右横についたものを急須と呼びます。

急須

土瓶

輪になったもち手が上についた急須です。

土瓶

ポット・ティーポット

もち手が、注ぎ口の反対側についた急須です。

ポット

湯呑

飲み口の大きさより、器の高さが高い場合に湯呑みと呼びます。

湯呑み

汲出

飲み口の大きさより、器の高さが低い場合に汲出と呼びます。

汲み出し

花器

花瓶

花を生けるための壺です。

鶴首

首のなが~い花瓶です。

鶴首

一輪挿し

花を一輪程度生けるための小さめの花瓶です。壁にかけることが出来るものもあります。

一輪挿し

最終更新 ( 2011年 2月 23日(水曜日) 14:50 )
 
2月
16
2011

陶器と磁器

土を焼いてできた和食器は「せともの」や「やきもの」「からつもの」と呼ばれていますが、その特徴で陶器と磁器に分けることできます。また、陶器の中でも、釉薬や焼く温度の違いで、土器、陶器、炉器(セッキ)と分けることが出来ます。知ってましたか?

陶磁器という言葉は、陶器と磁器を合わせて呼ぶときに呼ぶものです。

大きな陶磁器会社を除いて、陶芸作家・職人の窯元では、陶器か磁器のどちらかだけを作陶しています。

陶器と磁器の違いや特徴を知ることで、よりよく和食器を使っていくことが出来るようになりますよ。

陶器と磁器の特徴

陶器と磁器はそれぞれ異なった特徴を持っています。その特徴の違いが陶器と磁器の違いになります。

陶器の特徴

磁器以外のものを全般的に陶器と言いますが、ここでは吸水性がある素地に釉薬を施したものを陶器とします。

代表的な産地は、赤津焼、美濃焼、益子焼、唐津焼などです。

吸水性がある
釉薬の掛かっていな部分(素地)では水が染み込みます。
ザラザラしている
素地を指で触るとザラザラした感触があります。
全体に分厚い
磁器に比べて、収縮率が低いのでぼってりとした分厚い感じがします。
温かみがある
吸水性があるということは、スポンジのように空間があるので、磁器に比べなんとなく温かみを感じます。
柔らかい
見た目や触った感じもそうですが、実際に柔らかいので割れ易いです。(知らない間に欠けていたりします・・)
指ではじくと鈍い音がする
コンコン・ゴツゴツと言う感じです。コンクリートを叩く感じかな。
素地に色が付いていることが多い
釉薬の掛かっていない素地に色が付いている場合が多いです。しかし瀬戸の土は白い(良い土と呼ばれる所以)ので全部がそういうわけでは有りません。

織部向付

磁器の特徴

ガラス分の多い原料を、高い温度でしっかり焼き固めているので、ガラスに近い特徴を持ちます。

代表的な産地は、瀬戸焼(染付)、九谷焼、有田焼(伊万里焼)などです。

吸水性がない
陶器と違い水が染み込みません。
なめらか
釉薬のかかっていない素地でもなめらかな感触です。
光を通す
薄い部分を光にかざすと透けて見えます。
全体的に薄くてシャープ
面が薄手で、角が立っているのでシャープな印象があります。
冷たい
陶器に比べ熱を伝えやすいので、手でもつとヒヤッとします。
白い
磁器に多く含まれる原料(長石)が白いため、素地が白くなります。
指ではじくと高く澄んだ音がする
チンチンという感じの音がします。ガラスよりもちょっと鈍いかなってぐらいです。

白磁丸皿

炉器(焼き締め)の特徴

陶器よりも高い温度で焼くことで、ぎゅっと吸水性を小さくしたものです。

基本的に釉薬はかけませんが、備前焼ではやきものにわらを巻いた火襷(ひだすき)によって、赤い模様を付けたりします。また、薪の窯を使って、灰と炎がつくる自然模様をつけることがあります。

代表的な産地は、備前焼、常滑焼、伊賀焼などです。

釉薬が掛かっていない
伊賀焼なのでは釉薬(灰釉)がかかっているものもあります。
荒々しい
釉薬が掛かっていないので、土の様子(ロクロの筋や、彫りの角など)が直に伝わってきます。
光は通さない
磁器と違い、光は通しません。
固い
締まっているので固く、壊れにくいです。
指ではじくと高く音がする
キンキン・カンカンと感じで、陶器よりも響きの良い音がします。

備前片口

土器の特徴

比較的低い温度で焼いたものです。縄文式土器や弥生式土器などの昔から焼かれているものですね。最近では植木鉢などが土器になります。

伏見人形や博多人形などの土人形も土器に色を塗ったものですね。

陶器と磁器の原料

陶器も磁器も原料は粘土です。粘土とは、こまかい石の粒子と水が合わさって、粘り気をもった土のことです(字のまんまですね・・)。小麦粉に水を混ぜると粘り気が出てくるのとおなじような感じです。

磁器の粘土を磁土、陶器の粘土を陶土と言いますが、現在は原料配合や窯の技術進歩により、原料の違いがそのまま、陶器や磁器にならないことがあります。

陶土は陶器に適していて、磁土は磁器に適しているのですが、それらを混ぜたり、焼き方を変えたりすることで粘土の種類に関係なく陶器や磁器を焼くことが出来ます。

原料で磁器と陶器を分けるのではなく、その特徴で判断するとよいと思います。

コラム:土ものと石もの

磁器と陶器の違いの一つに、原料が土であるか石であるかを差して、陶器を「土もの」磁器を「石もの」と呼ぶことがあります。

地球のマグマが地表に現れて固まると石(火成岩)になります。石は地球上の雨や風などで削り取られ(風化)し砂や土になっていきます。砂や土が雨によって流され、水底に溜まっていく(堆積)すると、その重さで固まって石(堆積岩)になります。堆積岩は地震などの地殻変動で地表に表れると、また、雨や風で風化し土になります。

つまり、土と石では場所と時間が異なれば、同じ原料でも土になったり石になったりしていると言うことです。

日本では、磁器の原料として使われたものが石の形で見つかることが多いのでこのように呼ばれるようになったのではないでしょうか。

最終更新 ( 2015年 10月 08日(木曜日) 07:19 )
 
4月
3
2009

陶磁器の産地

中世(平安時代〜室町・戦国時代)から現在まで続く窯で代表的なものを六古窯と言います。

最近は考古学的な研究が進み、代表的な六古窯だけでなく多くの窯跡が見つかっています。

六古窯と言われる窯は古いだけでなく、産地としての規模や多様性を含め、現在でも日本の代表的な窯と言えます。

ちなみに、赤津焼は瀬戸焼に含まれます。

★六古窯
  • 瀬戸焼
  • 常滑焼
  • 越前焼
  • 信楽焼
  • 丹波焼
  • 備前焼

★今は存在しない代表的な古窯
  • 陶邑古窯(大阪府堺市・和泉市) 奈良時代以前
  • 猿投古窯(愛知県瀬戸市・豊田市) 奈良時代
  • 渥美古窯(愛知県渥美半島) 平安時代

一度は行ってみたい窯の町

陶磁器を買うのも良いのですが、ブラブラと街を歩くだけでも楽しいですよ。

そういう意味で有名な産地は、やきものだけでなく街歩きのスポットとしてもベストです。

分類不可能なんでも揃う街

陶器から磁器まで、有名作家から若手のモダンアートまで、高いものから安い物まで、本当になんでも揃っているやきもののテーマパークみたいな街です。

瀬戸焼(愛知県瀬戸市)

「本業焼」と言われる鎌倉から続く陶器の街と、「新製焼」と言われる江戸時代からの磁器の街の二つの顔をもつやきものの街。

街歩きには尾張瀬戸駅から瀬戸川沿いに登って行くと良いです。途中にある瀬戸蔵ミュージアムはオススメですよ。

窯元をめぐるなら、4月と11月に行われる窯元まわりがベスト。瀬戸の代表的な窯元集合地区の赤津地区、品野地区、水野地区でそれぞれ開催しています。

瀬戸市内にある愛知県陶磁資料館は日本でも最大規模の陶磁器専門の資料館です。日本だけでなく世界のやきものの始まりから現在までが見学できるので一度は行くべき!

美濃焼(岐阜県多治見市・土岐市・瑞浪市)

日本最大のやきもの生産量を誇る街です。

街歩きには多治見市役所の近くの本町を貫く通称「織部ストリート」がオススメです。

各地区ごとに陶磁器祭りや窯元めぐりを開催しているので、開催時期を確認してからいくのが良いですね。

美術館・博物館なら岐阜県現代陶芸美術館は一番のオススメ。時間があるなら近くの岐阜県陶磁資料館にいくのもアリ。

磁器の名品がみられる街

有田焼・伊万里焼(佐賀県有田町)

街歩きには有田駅と上有田駅の2つを中心に有田焼の販売店がならぶ、昔ながらの町並みを見ることが出来ます。

まずは佐賀県立九州陶磁文化館(なんと無料!)で有田焼の勉強をするのがベスト。このあとで柿右衛門窯、源右衛門窯、香蘭社の窯元をめぐると面白さ100倍ですね。

九谷焼(石川県金沢市)

言わずと知れた加賀百万石の街です。九谷焼以外に観るものがありすぎて困ってしまいますが、豪華絢爛な九谷焼きも兼六園を見た後では、ものすごく自然に見えてしまいますね。

焼締の荒々しさを味わう街

常滑焼(愛知県常滑市)

まずは常滑市陶磁器会館で観光マップを手に入れてから街歩きをすると良いでしょう。やきもの散歩道として約40分のAコースと約2時間半のBコースが設定されています。

市内にあるイナックスの工場に隣接された、窯のある広場・資料館、世界のタイル博物館、とこなめトイレパークも見ものですよ。

信楽焼(滋賀県信楽町)

信楽町役場に近い国道307号沿いは、まさにたぬき通りと行って良いほどお店が並んでいます。たぬきに惑わされそうですが、店内には見事な焼締の陶器が並んでいるので安心してくださいね。

滋賀県立陶芸の森は、広大な公園の中に陶芸館や産業展示館など、ちょっとした施設が点在しています。施設はそれなりですが、公園としてはとても立派です。お弁当を食べるならここで決まりです(よさそうな食事どころが余り無いので弁当が本当にオススメ)。

備前焼(岡山県備前市)

市内の伊部駅を中心の見所が固まっているので便利です。駅前の備前焼伝統産業会館によって、岡山県備前陶芸美術館を勉強してから街歩きを楽しむと良いですね。

最終更新 ( 2011年 2月 24日(木曜日) 17:15 )
 

陶磁器の命名方法

陶磁器の名前って漢字がいっぱい並んでいて、ちょっと分かりにくいですよね。

実はあの名前は、器の特徴をそのまま並べただけなんですよね。漢字を切る場所さえ想像が付けば、なにも恐れることはありません。

黄瀬戸輪花鉢の場合

まず初めにわかりやすいものから始めましょう。

黄瀬戸輪花鉢

黄瀬戸輪花鉢(愛知県陶磁資料館蔵:加藤唐九郎作)は、黄瀬戸の代名詞とも言える瀬戸焼きの鉢です。

名前の区切りは2つ、「黄瀬戸|輪花|鉢」 となります。

つまりは「黄瀬戸」の釉薬・技法を使い、「輪花」(口縁に花びらのようなクボミ)の形をした「鉢」の事です。

草白釉釉描金銀彩遠山夕陽図八角大皿の場合

草白釉釉描金銀彩遠山夕陽図八角大皿

草白釉釉描金銀彩遠山夕陽図八角大皿(愛知県陶磁資料館蔵:藤本能道作)は約20寸(62.5cm)もある磁器のお皿です。

かなり長い名前ですが、切るポイントは6つ「草白釉|釉描|金銀彩|遠山夕陽図|八角|大皿」です。

「草白釉」の釉薬で、「釉描」の技法と「金銀彩」の上絵付けで「遠山夕陽図」を描いた「八角」の形の「大皿」ということです。

釉薬や技法以外にも、産地(有田・伊万里)とか、焼き方「楽焼・焼締」、付属品「蓋付・揃」も名前の一部になったりします。

銘とは

国宝級の茶碗では、名前の他に「銘」と呼ばれる名前が別についています。

三井記念美術館所蔵の国宝:志野茶碗には銘として「卯花垣」が付いています。

銘は、茶人や数寄者が器の情景や雰囲気から銘を付けていましたが、作家自身が銘をつける場合もあります。

器の大きさ

陶磁器の大きさ、特に皿の場合は、直径を尺貫法のサイズで呼ばれます。また、そのサイズの範囲で、豆皿とは大皿のように区別される場合もあります。

サイズ 直径(cm) 区別(皿) 区別(鉢)
2寸 6.06 豆皿・小皿 小鉢(ぐい呑み?)
3寸 9.09 小皿 小鉢・向付
4寸 12.1 小皿・銘々皿・取り皿 小鉢・向付
5寸 15.2 中皿・銘々皿・取り皿 中鉢・向付
6寸 18.2 中皿・銘々皿・取り皿 中鉢・盛鉢
7寸 21.2 中皿 中鉢・盛鉢
8寸 24.2 中皿・盛り皿 大鉢・盛鉢
9寸 27.3 大皿・盛り皿 大鉢・盛鉢
10寸(1尺)〜 30.3 大皿・盛り皿 大鉢・盛鉢

 

器の各部分の呼び方

「高台」や「見込み」など、器の各部分の呼び方には、ちょっと特別なものが一部あります。ほとんどは見た目からくる一般的な名称ですが、茶碗などは茶の湯の世界での言葉が使われています。

茶碗の場合

茶碗の各名称

口縁(こうえん)・口造り

飲み口の部分を指します。この部分広がり方や、分厚さが全体の雰囲気や飲み口を左右しますね。それに欠けやすい部分なので扱いに気を付けましょう。

見込み

茶碗の内側の部分です。ここに模様や絵がある場合は高級(手間がかかっている)と思ってOKです。

茶溜り

茶碗の底です。飲み終わった後に残った模様から情景を想像すると楽しいですね。トルコではコーヒーを飲んだ後の模様で占い(コーヒー占い)をするそうですね。この部分を見込みという場合もあります。

茶碗のサイドの部分です。

胴よりも下の部分です。同部分に比べて形状に特徴があるとか、模様が違うとかなんとなく腰っぽい部分がある場合に呼びます。夏茶碗(平茶碗)のように、おわん型の場合などは胴と腰と区別がつかないときは、全部胴でOKですね。

畳付

茶碗を置いたときに畳に触れる部分です。高台の一部ですね。

高台

茶碗を安定して置くために盛り上がった部分です。高台で全体の出来栄えが左右されたり、陶工の腕前がわかるというくらい重要な部分です。茶碗の大きな見所です。

高台は、後から付けるもの(付高台)と轆轤(ろくろ)を回しながら削り出すもの(削高台)があります。削高台の場合は、後で削る分を考えて作らないといけないので、底が厚く重くなる傾向にあります。付高台は底を薄く軽く作ることが出来ます。その他に高台を十字に切った割高台があります。高麗茶碗(朝鮮半島で焼かれた古い茶碗)なのでみられる高台です。持ち運び用の紐がズレないための切り込みと言われていますが、正確な理由はわかりません。

高台脇(こうだいわき)・高台際(こうだいぎわ)

高台の廻りのところを呼びます。高台には釉薬をかけないので、釉薬が溜まりめや切れ目がなどが見所となります。

高台内

高台の内側です。製作者の刻印やサインがある場所です。また、釉薬がかからないため土本来の色や感触を見ることが出来ます。骨董マニアには一番の見所でしょうか。

皿の場合

皿の各部名称

口縁(こうえん)・口造り

器の縁の部分です。欠けやすいので注意が必要ですね。

見込み

皿の見所です。

糸切り・高台

轆轤(ろくろ)から切り出した部分です。シッピキ(切り出す糸:昔は馬の尻尾や藁を使っていた)で切った部分から呼ぶようになりました。

たららつくり(角皿など轆轤を使わずに粘土板から作る)の場合でも、糸切りや高台と呼ぶとこもあります。

皿の底です。茶碗と同じように釉薬をかけないので、土の色や感触を見ることが出来ます。

鉢の場合

皿の場合と同様の呼び方になります。 

鉢の各部名称

徳利・花瓶の場合

徳利の各部名称

口縁(こうえん)・口造り

お酒を注ぐ部分です。注ぎやすいように切り込みがつけてある場合もあります。

頸・首(くび)

細くなっている部分です。この部分が長いものを「鶴首」(つるくび)を呼んだりします。轆轤で長くて細い首を作るには大変な技術力が必要です。赤津六衛兵窯(スーパーロクロ職人の山内砂川さんの窯元)では窯の里巡りにて、ロクロの実演を見ることが出来ます。

胴の脇についている装飾を耳と呼びます。2つだけでなく、3つあっても4つあっても耳と呼びます。徳利や花瓶では装飾的なことが多いですが、鉢に付いている場合、グラタン皿やスープ皿として実用的に使えます。

肩っぽい部分が肩です。人間と同じようになで肩やいかり肩がありますね。

持ちやすいようにこの部分にヘコミがある徳利も多いですね。

胴に比べて細くなっている部分を腰と呼びます。瓢箪(ひょうたん)形の場合はクビレの部分が腰ですかね。(その下は尻?)

糸底・糸切り

皿や鉢とおなじ様にシッピキで切り出した底のことです。

急須の場合 

急須の場合はそれほど特別な呼び方は有りません。一般的な呼び方でそのまま通じます。

急須の各名称

最終更新 ( 2011年 2月 21日(月曜日) 17:48 )
 
11月
5
2008

製法や釉薬

陶磁器は粘土を固めて焼いただけと聞くと簡単そうですが、実際にはいくつかの工程がありとても複雑なものです。作り方を知ると陶工さんの苦労がわかります。

やきものの製造工程

1.採土

地面かた陶磁器に適した土を掘ってきます。瀬戸(愛知県瀬戸市)では、ずーと昔から土を掘っているので市の中にでっかい穴が空いています。瀬戸の市民は「瀬戸のグランドキャニオン」と呼んでいます。


大きな地図で見る

白くなっている部分が採土場です、左上の市民公園にある野球場と比較するとその大きさがわかると思います。

地図をよく見るとわかるのですが採土場の廻りには森が残してあり、周辺からは見えないようになっています。なので瀬戸市民でもグランドキャニオンを見たことない人がたくさんいますね。

2.土づくり

掘ってきた土や石を砕いてフルイにかけた後で水に浸します(ハタキ土)。ハタキ土をさらに水で浸して、上に溜まった目の細かい土を分別します(コシ土)。

コシ土の方が伸びやすく割れにくいのですが、味のある陶器をつくるにはハタキ土がよいそうです。

この土をムロ(薄暗くて風の入らない保管庫)でしばらく寝かします。1年以上寝かすと良い土になるそうですがなかなかそこまでしているところは少ないそうです。

寝かしておいた土を足や手で押して空気を出します(土押し・大押し)。土を練るのは、空気が入っていると割れやすくなるのと、土を均一にして加工しやすくするためです。土をねじるようにしてさらに練り込むのを土もみ・ねじ押し・菊練りと言います。菊練りは練った土の形が菊の花のように見えることからですね。土押しを機械(土練機:どれんき)で行うこともあります。

土にこだわる工房では採土からすべて自前でやるそうです、専門業者から各段階の土を購入して使う工房もあります。

菊練りから轆轤(ろくろ)に乗せる砲弾型へ(美山陶芸教室:寺田鉄平)

3.形を作る(成形)

土を器の形にします。「轆轤(ろくろ)」「手びねり」「たたら」「型起こし」「鋳込み」の方法があります。

轆轤成形

回る台の上に粘土の塊を置いて、器の形に伸ばしていく方法です。手でまわす手ろくろ、足でまわす蹴ろくろ、電動ろくろがあります。

ろくろの歴史は古く、紀元前のギリシャの壺もなどもろくろで作られています。手ろくろは中国から瀬戸に伝わり、蹴ろくろは朝鮮から九州に伝わったと言われています。

徳利や花瓶の様に、口がちいさくなっておるものは、木でできたコテを使って作ります。ろくろから切り離すときはシッピキと呼ばれる糸を使って切り離します。

ろくろ実演(六兵衛陶苑:加藤大吾)

ろくろ実演:急須(美山陶芸教室:寺田鉄平)

手びねり

土から直接手を使って形作る方法を総称して手びねりと呼んでいます。

ろくろで基本的な形を作ってから、手で形を作ったり、土を紐状にしてとぐろを巻くように形を積み上げていく方法などがあります。

たたら

板上にスライスした土(たたら)を組み合わせて形を作ります。四角い皿や、箱状の器を作るときに用いられる工法です。

型起こし

石膏などで作った型に、土を押し付けて形を作ります。金属加工の鍛造に近い感じですね。

鋳込み

土を水で溶いて液状にした泥漿(でいしょう)を、石膏で作った型に流しこんで形を作ります。人形やポットなど、複雑な形を沢山作るのに向いています。金属加工で言うと鋳造ですね。

4.飾りをつける(装飾)

急須の注ぎ口を付けたり、茶碗の高台を作ったりします。また串や縄をつかって模様を付けたり、形に面白さを加えるために、器全体を歪ませたりします。

5.乾燥〜素焼

できた陶磁器を数日ほど放置して乾燥させます。乾燥したものを低めの温度(約800℃)でそのまま焼くことを素焼きと言います。

素焼きをすることでその後の絵付けや施釉がやりやすくなります。

備前焼などの焼締(炉器)の場合、素焼〜施釉は行わずにいきなり本焼きをします。

陶器でも素焼きを行わずに、下絵や施釉を行う場合があります。

6.下絵付け

下絵付けは釉薬の下に描く絵です。染付は呉須(ごす)と呼ばれる青色に発色する顔料を使って下絵を描いた器の事です。

下絵は筆を使って描きます。

7.施釉

釉(うわぐすり)とは陶磁器の表面を覆ったガラス性のものです。釉をかけることで水分が浸透することを防ぎ、表面がなめらかになって艶が出ます。

黄色の黄瀬戸釉(きぜとゆう)、緑の織部釉(おりべゆう)、白の志野釉(しのゆう)、茶の鉄釉(てつゆう)など、釉薬の分類がありますが、工房ごと、陶工ごと、器ごとに釉薬の成分・調合がちがうので同じように見える織部でも、見比べてみるとずいぶん色や雰囲気が違うことがわかります。

自然釉は薪の窯で焼くときに、薪の灰が表面にくっついて溶けたものです。

染付の場合は、下絵を見せるために透明になる釉薬をかけます。

8.焼く(本焼)

窯を使って焼きます。薪窯・ガス窯・電気窯などがあり、それぞれに特性があるので焼き上がりが違ったものになります。

焼く対象がことなれば焼き方も違ってきます。備前焼きなどの焼締めは高い温度で長い時間をかけて焼きます。

酸化と還元

釉薬の色は、釉に含まれる金属が発色することで決定されます。

金属は高温になると酸素と結合し発色しますが、結合する酸素の量(酸化)によって色が変わっていきます。胴の場合、結合する酸素が多ければ緑に、少なければ赤になり全く正反対の色になります。

薪やガスの場合は、燃焼の際に酸素が必要です。高温で燃えている状態で、外からの酸素の量を減らすと、中の炎が釉薬の中に含まれる酸素を取り出します(還元)。

焼き初めからの時間や温度を考えながら、酸素の量を調節することで目的の色に仕上げていきます。

焼き上がるまでには何日もかかることがあるので、薪を使って人手で調整するのは本当に大変そうですね。

焼き終わった後も、時間をかけてゆっくりと冷ましていきます。上絵付けをしない場合はこれでほとんど完成です。

緋襷・火襷(ひだすき)

緋襷は備前焼きなどの焼締で装飾に使われる技法です。

器の廻りに塩水に浸した藁を巻いて焼くと、藁の跡に鮮やかな赤色の模様ができます。

藁を巻いた部分の融点が下がり、土の中の鉄分が集まることで赤くは発色すると言われています。

引き出し黒・瀬戸黒

燃え盛る窯の中から鉄釉をかけた器をハサミで挟んで引っ張り出し、いっきに冷まします(冷たい水の中に突っ込むこともあります)。

こうすることで濡れたような美しい艶を持った黒い表面が出来上がります。

貫入(かんにゅう)

高温で溶けてガラスの液状になった釉薬が冷えて縮む際にひび割れたものを貫入と言います。

ベースとなる素地も焼きあげると2割程度小さくなりますが、釉の方がさらに小さくなるためにひび割れが発生します。

釉薬が厚いほうが貫入が目立って見えます。青磁の皿などでは、いくつもの貫入が層になって見えたりしてとても幻想的で美しいですね。

貫入に柿渋を染みこませて目立つようにしてある器もあります。自然の織り成す網目模様がなんとも言えない重みを与えてくれます。

お茶碗はカップなども、使っていくにつれて茶渋やコーヒーが貫入に染みこんで風合いを高めていきます。

最近では素地と釉薬の収縮率を同じにして、貫入が入らないようにしているものもあります。

また、釉薬よりも素地の収縮率が高い場合、表面は割れていませんが中の素地が割れていることがあります。このような場合、簡単な衝撃で割れてしまうことがあります。

外国性の器や骨董などを手に入れる際に、表面の釉薬が剥がれ落ちているものは注意が必要です。中の素地が割れている可能性が高いと思います。

9.上絵付け

焼きが完了したあとで、描くものです。描いた後で、低い温度(約800℃)で焼き付けて完成となります。

低い温度で焼くため、下絵に比べていろんな色が使えるし、発色も良いです。ただし、釉の上に色が乗っているだけなので、強くこすると剥がれてしまいます。食器洗い機は大敵です。

金彩・銀彩はさらにこのあとで描いて焼き付けます。丁寧に扱わないと簡単に剥がれてしまいます。

イングレイズ・シンクイン

簡単に剥がれる上絵付けの弱点を補うため、イングレイズやシンクインと呼ばれる技法があります。

釉薬が溶ける高い温度で上絵付けを焼き付けることで、釉薬の中に上絵付けを入り込ませる技法です。

通常の上絵付けに比べて、色や発色の制限はありますが上絵にくらべてかなり扱いやすくなっています。

10.仕上げ

最後に糸切り(器の底)を磨いて完成です。

糸切りがザラザラしていると、机やお盆を傷つけてしまうのでよく磨いてあるか確認しましょう。

窯元で購入する場合は、お願いすると磨いてくれますよ。

最終更新 ( 2011年 5月 18日(水曜日) 14:40 )
 


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