赤津焼を中心に、和食器の暮らしを探求する
陶磁器の名前って漢字がいっぱい並んでいて、ちょっと分かりにくいですよね。
実はあの名前は、器の特徴をそのまま並べただけなんですよね。漢字を切る場所さえ想像が付けば、なにも恐れることはありません。
まず初めにわかりやすいものから始めましょう。
黄瀬戸輪花鉢(愛知県陶磁資料館蔵:加藤唐九郎作)は、黄瀬戸の代名詞とも言える瀬戸焼きの鉢です。
名前の区切りは2つ、「黄瀬戸|輪花|鉢」 となります。
つまりは「黄瀬戸」の釉薬・技法を使い、「輪花」(口縁に花びらのようなクボミ)の形をした「鉢」の事です。
草白釉釉描金銀彩遠山夕陽図八角大皿(愛知県陶磁資料館蔵:藤本能道作)は約20寸(62.5cm)もある磁器のお皿です。
かなり長い名前ですが、切るポイントは6つ「草白釉|釉描|金銀彩|遠山夕陽図|八角|大皿」です。
「草白釉」の釉薬で、「釉描」の技法と「金銀彩」の上絵付けで「遠山夕陽図」を描いた「八角」の形の「大皿」ということです。
釉薬や技法以外にも、産地(有田・伊万里)とか、焼き方「楽焼・焼締」、付属品「蓋付・揃」も名前の一部になったりします。
国宝級の茶碗では、名前の他に「銘」と呼ばれる名前が別についています。
三井記念美術館所蔵の国宝:志野茶碗には銘として「卯花垣」が付いています。
銘は、茶人や数寄者が器の情景や雰囲気から銘を付けていましたが、作家自身が銘をつける場合もあります。
陶磁器の大きさ、特に皿の場合は、直径を尺貫法のサイズで呼ばれます。また、そのサイズの範囲で、豆皿とは大皿のように区別される場合もあります。
サイズ | 直径(cm) | 区別(皿) | 区別(鉢) |
---|---|---|---|
2寸 | 6.06 | 豆皿・小皿 | 小鉢(ぐい呑み?) |
3寸 | 9.09 | 小皿 | 小鉢・向付 |
4寸 | 12.1 | 小皿・銘々皿・取り皿 | 小鉢・向付 |
5寸 | 15.2 | 中皿・銘々皿・取り皿 | 中鉢・向付 |
6寸 | 18.2 | 中皿・銘々皿・取り皿 | 中鉢・盛鉢 |
7寸 | 21.2 | 中皿 | 中鉢・盛鉢 |
8寸 | 24.2 | 中皿・盛り皿 | 大鉢・盛鉢 |
9寸 | 27.3 | 大皿・盛り皿 | 大鉢・盛鉢 |
10寸(1尺)〜 | 30.3 | 大皿・盛り皿 | 大鉢・盛鉢 |
「高台」や「見込み」など、器の各部分の呼び方には、ちょっと特別なものが一部あります。ほとんどは見た目からくる一般的な名称ですが、茶碗などは茶の湯の世界での言葉が使われています。
飲み口の部分を指します。この部分広がり方や、分厚さが全体の雰囲気や飲み口を左右しますね。それに欠けやすい部分なので扱いに気を付けましょう。
茶碗の内側の部分です。ここに模様や絵がある場合は高級(手間がかかっている)と思ってOKです。
茶碗の底です。飲み終わった後に残った模様から情景を想像すると楽しいですね。トルコではコーヒーを飲んだ後の模様で占い(コーヒー占い)をするそうですね。この部分を見込みという場合もあります。
茶碗のサイドの部分です。
胴よりも下の部分です。同部分に比べて形状に特徴があるとか、模様が違うとかなんとなく腰っぽい部分がある場合に呼びます。夏茶碗(平茶碗)のように、おわん型の場合などは胴と腰と区別がつかないときは、全部胴でOKですね。
茶碗を置いたときに畳に触れる部分です。高台の一部ですね。
茶碗を安定して置くために盛り上がった部分です。高台で全体の出来栄えが左右されたり、陶工の腕前がわかるというくらい重要な部分です。茶碗の大きな見所です。
高台は、後から付けるもの(付高台)と轆轤(ろくろ)を回しながら削り出すもの(削高台)があります。削高台の場合は、後で削る分を考えて作らないといけないので、底が厚く重くなる傾向にあります。付高台は底を薄く軽く作ることが出来ます。その他に高台を十字に切った割高台があります。高麗茶碗(朝鮮半島で焼かれた古い茶碗)なのでみられる高台です。持ち運び用の紐がズレないための切り込みと言われていますが、正確な理由はわかりません。
高台の廻りのところを呼びます。高台には釉薬をかけないので、釉薬が溜まりめや切れ目がなどが見所となります。
高台の内側です。製作者の刻印やサインがある場所です。また、釉薬がかからないため土本来の色や感触を見ることが出来ます。骨董マニアには一番の見所でしょうか。
器の縁の部分です。欠けやすいので注意が必要ですね。
皿の見所です。
轆轤(ろくろ)から切り出した部分です。シッピキ(切り出す糸:昔は馬の尻尾や藁を使っていた)で切った部分から呼ぶようになりました。
たららつくり(角皿など轆轤を使わずに粘土板から作る)の場合でも、糸切りや高台と呼ぶとこもあります。
皿の底です。茶碗と同じように釉薬をかけないので、土の色や感触を見ることが出来ます。
皿の場合と同様の呼び方になります。
お酒を注ぐ部分です。注ぎやすいように切り込みがつけてある場合もあります。
細くなっている部分です。この部分が長いものを「鶴首」(つるくび)を呼んだりします。轆轤で長くて細い首を作るには大変な技術力が必要です。赤津六衛兵窯(スーパーロクロ職人の山内砂川さんの窯元)では窯の里巡りにて、ロクロの実演を見ることが出来ます。
胴の脇についている装飾を耳と呼びます。2つだけでなく、3つあっても4つあっても耳と呼びます。徳利や花瓶では装飾的なことが多いですが、鉢に付いている場合、グラタン皿やスープ皿として実用的に使えます。
肩っぽい部分が肩です。人間と同じようになで肩やいかり肩がありますね。
持ちやすいようにこの部分にヘコミがある徳利も多いですね。
胴に比べて細くなっている部分を腰と呼びます。瓢箪(ひょうたん)形の場合はクビレの部分が腰ですかね。(その下は尻?)
皿や鉢とおなじ様にシッピキで切り出した底のことです。
急須の場合はそれほど特別な呼び方は有りません。一般的な呼び方でそのまま通じます。